社会福祉法人輝風会 風の子保育園 春風デイサービスセンター そよかぜ児童クラブ 給食室より

 給食室からみた子どもたち

  栄養士 坂内 陽子

親子調理初めまして いつも給食室にいるので、顔を合わす機会が少なく本当に初めましてという方が多いと思います。普段、子どもたちと直接関わることは多くないのですが、給食室からみた子どもたちの様子や、給食をつくっていて感じたことなどを書いてみました。
 風の子の給食室は、乳児と幼児の部屋のちょうど真ん中にあります。子どもたちの様子がよく見えますし、また子どもたちからもよく見えるようになっています。子どもたちにとって、給食室はとても身近な存在なのではと思っています。
 給食イコール食べることと考えがちですが、風の子の子どもたちは、ただ食べるだけでなく、様々な感覚、五感全てを使って給食を食べています。
 まず、朝、食材が運ばれてくるとみんなで給食室に届けてくれます。かぼちゃ組は牛乳パックを手に一つずつ持って、何人もの子が次々に「牛乳屋さんで〜す」と言いながら配達してくれます。どんぐりやたけのこ組になると、ちょっと重いものも友達どうしで持ってきてくれます。こんなふうに、毎日小さなお手伝いを通じて食材に触れるという経験をします。
 また、給食室の様子を見に来ては「今日な〜に?」「今切っているの○○でしょ」など話しかけてきます。給食を作っているところをよく見ていますし、つくっている時の音もよくきいています。カレーやお魚の日などは遊戯室ににおいがたちこめるので、みんなの好きなカレーだとわかっていても何回も何回も「今日カレーだよね」「本当にカレーでしょ」と聞きに来ます。ちょっぴり苦手なお魚は「なんだ、魚か」とちらっと見て帰っていったりしています。
 ただ出されたものを食べるだけでなく、食べ物に触れる、みる、きく、においをかぐという五感全部を使って、食べることを大切にしていきたいと思っています。
 現在、出来合いのもの、チンすればすぐ食べられるといった便利なものが沢山あります。でも、手作りのものにはそれと違った良さがあるのではないでしょうか。給食を作り終えて子どもたちの所へ行くと、よく「この○○はだれが切ったの?」と聞いてきます。そんなときは「がんばってつくったから食べてね」「△△さんがこの野菜を切ったんだよ」などなど、子どもたちと会話もはずみます。
 ちょっと苦手なものがあって食べるのが遅くなった子や、友達とのおしゃべりが多すぎてしまった子は、食器を一人で給食室へ持ってきます。やはり、ちょっぴり照れくさかったり、緊張するのか、何も言えずに皿だけ差し出していく子、「皿っ」と言ったきりじ〜っと見つめる子、中には皿を置いて逃げるように走り去って行く子と様々です。だけどそんなときは「どうしたの?何て言うんだっけ?」と聞くようにしています。初めは言葉が出てこなかった子も、だんだんと「ごちそうさま」の一声が聞こえるようになり、とてもうれしく感じます。簡単・便利な食べ物があふれる現代だからこそ、作る側と食べる側がお互いに顔の見える関係、言葉が交わせる関係でいたいなぁと思います。

私が毎月の献立を立てていて思っていることをお話ししたいと思います。毎月、来月は何にしようか、子どもたちの嗜好、栄養、かみごたえなど考えることはいろいろありますが、基本になっているのは「和食をなるべく多く取り入れること」と「季節のものを使う」ことです。
 小児成人病、肥満などが現在の食生活に大きく関係している疾病として知られています。そんななかで和食の良さが見直されています。
 しかし、いきなり和食を出してもなかなか子どもたちは、こちらが思うようには食べてくれません。特に4月は環境が変わって慣れない子が多いので、献立内容はなるべく食べやすいもの、好みそうなものにしています。甘辛く味付けしたひじきやきんぴら味は子どもたちの好む和食です。そういったものから始めていって、夏が終わり運動会を過ぎ、子どもの食べる力がつく頃から和食もだんだんと増やしていきます。くり返し食べていくうちに少しずつ和食に慣れていっているようです。
 次に「季節のものを使う」ですが、毎月何の献立にしようか、マンネリになっていないかなど考えます。だけど、その季節、時期のおいしいもの、昔からの食べ方というのはだいたい決まっています。そして季節のものは、安価なだけでなく栄養価も優れているので、子どもたちには料理と一緒に季節感も味わってほしいと思っています。
 しかし、どんなに考えて立てた献立も、子どもが主役となって作る「クッキング」にはかないません。
 毎月、にんじん・どんぐり・たけのこ組が順番に計画している「クッキング」では、みんな前々から心待ちにしていて、当日の朝は「今日クッキングだよ。できたら、ちょっとだけあげる」と言ってきてくれます。軽食風のもの、お菓子風のもの、その時々によっていろいろなものを作りますが、どれも自分たちで作ったということが一番のごちそうになるようです。普段はあまり好きでないものも、みんなで作ってみんなで食べることで、ほとんど残しません。作っているときのワクワク、ドキドキの顔、うれしそうな表情を見ると自分の手で作る・体験するということは、すごい力を持っているのだなぁと感じます。

今のたけのこ組がここまでくるにはかなりの時間がかかりました。以前からどのクラスより食べないで、給食の残しも多く、自分たちで作ったクッキングでさえ「ボクこれ嫌い、いらない」と、食べないこともありました。
 そこでクラス担任の提案で、クッキングの回数を増やしてみたり、給食の材料を刻むお手伝いをしてみたり、盛り付ける量を少し減らして全部食べれたという気持ちになれるようにするなど、いろいろ試みてみました。すると少しずつですが変化がでてきました。一番大きな変化の時は、どんぐりからたけのこになる時で「いっぱい食べて、たけのこぐみになるんだ」という想いからか、驚くほど食べるようになりました。ほとんどいらなかったおかわりも、だんだんと必要になっていきました。そして、つい先日なのですが、白菜の塩もみを給食にだしたときに、「これおいしい。どうやって作るのか、作り方をきいてクッキングで作ろうよ」と話していました。
 クッキングで作って3時のおやつが「白菜の塩もみ」と考えると、ちょっぴりおかしかった反面、あの「食べないクラス」のたけのこ組が、自分たちで作って食べたいと言ってくれたことを、とてもうれしく思いました。

毎日、給食を食べているところを見に行くと、何か残している子を見つけては「あれが残っているよ」「あれも食べて、これも食べようよ」とつい自分でも言ってしまいます。好き嫌いなく食べることも大切、いろいろなものが食べれることも大切なのですが、それよりも前にまず、食べる物・食べることに興味をもつということが一番の基本なのではないでしょうか。そんなことを思いながら、日々、給食を作っています。

社会福祉法人輝風会 風の子保育園 春風デイサービスセンター そよかぜ児童クラブ 給食室より