社会福祉法人輝風会 風の子保育園 春風デイサービスセンター そよかぜ児童クラブ 給食室より

  ---2歳児の保育---

 憧れのまなざしを大切にした保育を目指して

     田野 千亜紀

 《はじめに》
 風の子保育園は、産休明けから就学前までの九〇名定員です。無認可乳児保育園から始まり、地域の要望にそって平成四年に学童保育を、平成一〇年には老人の春風デイサービスセンターを設置しました。
 保育時間は朝七時一五分から夕七時三〇分です。時間差の勤務になっている為、保育者が全員揃う一〇時くらいまでの間、二〜五歳児は合同で自由遊びを楽しんでいます。ですから、二歳児室に三歳以上児が遊びに来て、形の複雑な飛行機や剣をブロックで作ると、「ぼくもつくってみたい!」と、みようみまねで作っています。園全体での関わりを大切にする中で、自然に「お兄さんお姉さんのようになりたい」という憧れをもつようになり、その思いが素晴らしいパワーを生むことを感じました。二歳児の成長過程である他児の模倣・三歳以上児との関わりが、遊びや生活と密着して大きく育っていくことを視点に、昨年の二歳児一七名の一年をおってみたいと思います。

 《春》「靴を履く」「水」生活に身近な物への憧れ 二歳児室は、道路脇にある為、ゴミ収集車やトラック、時には消防車、パワーショベルも見える、とても魅力的な部屋です。いち早く車を見つけた子が皆に知らせ、着替えが入っている棚の上に登り、何人も頭を並べて見ています。また玄関にも近いので、一人が靴を履くとそれを見てまた一人と、数人で靴を履いたり脱いだりの繰り返しを楽しんでいます。
 しかし、靴を履くと玄関から飛び出してしまうこともあるので、違う遊びに誘ったりしているのですが、なかなかやめられず目が離せませんでした。

2歳児の保育 ところが、その成果でしょうか、一人で履こうとする気がなかった子が、自分で靴が履けるようになったのです。そして、二ヶ月位たち、玄関遊びが自然となくなってきたら、次のポイントを見つけていました。
 気温が高くなり、部屋の中にある水飲み場の水遊びが新たに始まりました。蛇口を上に向けてひねりすぎ、噴水状態になり床が水浸しと言うこともよくありました。これも、いつの間にかひねること・水量を調節することを覚えていたのでした。
 大人が危ない・やらせたくないと思っていることは、子どもたちにとってとても興味があることです。

 《夏》「オムツを取ってパンツをはきたい」お兄さん、お姉さんみたいになりたい
 晴れた日は朝から園庭で遊びます。遊びが盛んになった頃、おやつの時間で部屋に入る事が遊びの中断になってしてしまう事から、朝のおやつをなくしました。
 たっぷりと遊び、お腹をグッとすかせた所でたくさん昼食を食べるようにしています。その為、朝ごはんもしっかり食べてくる様になり、お昼には「おなかすいた」と言う声が多く聞かれるようになりました。
 泥んこや水遊びを楽しむ頃は、オムツはずしの機会でもあります。あまり興味を示さなかったトイレでしたが、「お兄さん・お姉さんの様にカッコいいパンツはいてみる?」との言葉掛けや、実際にお兄さんたちのパンツを見ることによって気持ちが高まっていきました。月齢の高い子たちが「おれたち赤ちゃんじゃないから」「もう、お兄さんだから」と、自信に満ちあふれパンツを見せ合っている姿が印象的でした。

 《秋》「どろだんごづくり」憧れから遊びの主人公への一歩
プール遊び・運動会を終えすっかり落ち着いた頃、雨上がりの園庭で五歳児はどろだんごづくりに夢中になっていました。
 春の頃は、「できない」「つくって」と要求し、できた物をもらって持っているだけで満足していた二歳児は、今では「自分でやってみよう!」と言う気持ちを持ち、又、手先もだんだんと器用になって、形作れるようになりました。
 白砂をかけて磨くのですが、良い白砂のある場所や、かける手つきまでしっかりとお兄さんたちと同じで、すっかりなりきっていました。磨き方は、お兄さん・お姉さんにはまったく及ばないのですが、同じことをしているだけで満足のようです。
 友達とイメージを共有して遊べる様になり、そんな中「よせて」「いいよ」「よせてって言わないとだめ」と言葉のやりとりも盛んに出てきました。
 三歳以上児への憧れを持ちながらも、少しずつ自分たちで遊びを考え、一緒に楽しめる様になった子どもたち。友達と遊ぶって楽しいね!

 《冬》「オレたちもできる……」
 冬の遊びといえば、コマまわし・カルタとり・あやとりなどをやっています。中でも、コマまわしは保育者も回せるようになろうと必死にやっています。それがうつってか、子どもたちも夢中になっています。
 五歳児は、個人用のコマがあり、四歳児以下は保育園用のコマを使っています。早速、お兄さんたちが使っているのをみつけ、「やってみたい!」と言いだしました。コマは四歳児室にあり、何日間か自由遊びの時に通って、コマを手にするうちに回せるようになった子が一人いました。さすがに皆から驚かれ、本人も大満足でした。
 でも、ヒモをまいてもらって回す子も、ただコマを手にしているだけの子も、気持ちは同じ「できるつもり」なのです。

 《まとめ》
 開園(平成三年)当時、ゼロ・一・二歳児室は一番奥にあり、乳児部として生活していたため、幼児との交流はとても希薄でした。
 年々ゼロ歳児の入所が増える中で平成七年に二歳児室を幼児側に増築しました。遊戯室を真ん中にして五歳・四歳・三歳・二歳児室がその回りを囲っています。否応なく生活も遊びも幼児と一緒の生活がスタートしました。
 二歳児が激しい動きの年長児たちと過ごすこと、環境の変化への戸惑いがありました。高い所に上がれば落ちないかと保育者がつきっきり、保育者が確保できなければ、室内の安全な場所へ移動する等。
 また、春の頃は玄関に行って、履き物を出したり、投げたり、ぶかぶかの靴を履いてみたり、その片づけに追われることと、玄関から飛び出しはしないかという不安から玄関と遊戯室の境目に柵をつけて、外遊び・散歩以外は玄関に出られないようにしました。
 今ふりかえれば子どもたちの内面が見えず、危険とわずらわしさからの回避のみを考えていたように思います。でも子どもたちはそんな大人側の事情はおかまいなしで、柵はよじ登って越え、「あの、○○マン」の靴を目指し一直線です。よじ登ってまで行きたい子にさすが保育者もむりやり連れ戻すこともできず、保育者の根負けです。玄関で履きたい靴を履いて得意顔を見せる子、靴の出し入れを楽しむ子、四月、五月は飽くことなく繰り返し楽しんでいます。
 その姿を見ながら保育者の気持ちが変化していきます。子どもたちの「やりたい」の気持ちに寄り添ってやらせてみようと思うようになりました。そのように気持ちを切り替えて見てみると、子どもたちが何を望み、何に憧れ、未熟ながら○○のつもり、○○になりきって遊ぶようすが少しずつ掴めてきたように思います。そしてまた年長児や年中児は「憧れられる対象である自分」を思い描きつつ、二歳児にはやさしいまなざしを向けてくれています。
 そして今は、年長・年中児の行動をしっかり見つめ「あんなことやりたい」の憧れの気持ちをさらに膨らませている三歳児の姿が見られます。
 (2000年8月横浜 第32回保育団体合同研究集会要綱より)

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